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殉教

殉教じゅんきょう)とは信仰の為に殺されること。

殺されても信仰を守ることで、自己の命より信仰を尊ぶことを示す。

殺戮者が殉教者を名乗ることがあり、そのことによってその殺戮者の宗教が「テロ」を教義にしていると言われることはままあるが、厳密に教義と照らし合わせた上で判断すべきである。

転じて、民族の独立の為に死ぬ者を含むこともある。

キリスト教徒の殉教

キリスト教の殉教者として聖書(使徒行伝・使徒言行録)に登場するのはステパノ・十二使徒ヤコブなどである。洗礼者ヨハネも一種の殉教者であるが、キリストより以前に死んだ彼を「キリスト教の殉教者」とみなすのは正確ではない。

ローマ時代の殉教

キリスト教は、自分たちの崇める神以外の神を認めない一神教である。これは、皇帝を神として崇拝するよう求めたローマ帝国の政策に反していた。ローマ人は皇帝が神だと信じていたわけではなく、キリスト教そのものを敵視していたわけでもなく、皇帝への服従を形式によって示すことを期待していた。帝国の統一性が崩れだした後期ローマ帝国にとって皇帝崇拝は帝国および皇帝への帰属を表明する理念的行為として重視されたのである。

しかし、自分の口から皇帝を神と認める言葉を出すことは、キリスト教徒にとっては重大問題であった。皇帝崇拝を拒んだキリスト教徒は、捕らえられて死刑に処された。こうして殺された人を、キリスト教徒は殉教者として称えた。なお東方正教会(日本ハリストス正教会)では殉教の代わりに致命・致命者の語を用いる。

ローマにおいて皇帝崇拝の強制は時折り発動されることにすぎず、その際もキリスト教徒を根こそぎに処刑するような措置はとられなかったが、初期キリスト教徒にとって迫害は生涯のうちに何の経験もなしにはすまされないことだった。信仰告白による死の危険を自分がどこまで冒すのか、またそれをどこまで他の信者に要求できるのかは、当時のキリスト教徒にとって深刻な問題であった。なお洗礼を受ける前にキリスト教への支持を表明して殉教することを「血の洗礼」と呼ぶ。

殉教者の崇拝

キリスト教が認められると、帝国内での殉教は止んだ。かわりに、北方への宣教者が現地の宗教と衝突して殉教する事件がおきた。

中世以後のカトリック教会は、殉教者を聖人の中に列し、聖人を神と人間を仲介できる存在と位置づけた。ヨーロッパの民衆にキリスト教が根をおろすと、聖人に対する各地域の「需要」は増えた。そこで、過去の殉教を伝説化し、その規模を誇大にすることで、質量両面で聖人の水増しが行なわれた。なおキリスト教化された地域においても、時の政権に反対を述べて殉教する者(例:ネポモクのヨハネ・モスクワのフィリップ)、あるいは対立する教派に属する者に殺害され殉教する者(例: ペトルス・マルティヌス)がおり、殉教は必ずしも非キリスト教地域に固有な現象ではない

近世日本の殉教

イエズス会等が非キリスト教地域に果敢な宣教に乗り出し、その後多くの宗派が世界中に宣教者を送り出すようになると、各地で殉教が生じるようになった。宣教者の活動は異文化の正面衝突を意味し、殉教の可能性を増やす。しかし殉教を作るのは殺す側であって殺される側ではない。大規模な殉教は、死刑をもって迫害する権力者の弾圧によるもので、そのような激しい弾圧国の筆頭が、日本であった。

日本では、個々の教義や態度が問題にされるのではなく、キリスト教徒であること自体が罪とされた。逮捕された者は、キリスト教を棄てれば許された。しかし棄教を拒んだ人は例外なく死刑になり、しばしば拷問の末に残酷な処刑方法で殺された。こうして、15世紀末から16世紀初めの日本では、多くの外国人宣教師と日本人信者が殉教した。

信仰が極刑にされた背景には、一向一揆との戦いを経験した武将たちが、強い信仰に警戒心を抱いていたことがある。残酷な拷問と刑罰の背景には、当時の日本が一般犯罪に対しても死刑を多く執行し、残酷な処刑法をとる国だったことがある。

宣教師の到来がとだえ、キリスト教徒の活動が表面から消えると、日本での殉教は少なくなった。しかし完全に絶えたわけではなく、江戸時代を通じて隠れキリシタンの発覚と殉教が散発した。キリスト教徒の処刑は、欧米諸国の圧力で明治時代には少なくなった。

キリスト教の殉教者


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