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ざらざらで水平な机の上で、ある一定の質量をもった物体を水平方向に引っ張る場合と、氷の上で同様に物体を引っ張る場合とでは、その物体を動かすのに要する力は明らかに異なる。すなわち、氷の上で物体を引っ張ると簡単に物体が動いてしまうのに対して、ざらざらな机の上では物体を引っ張るのに一定の力が必要である。これは、机の上においた物体に、何らかの力が水平逆向きに働いているのに他ならない。
この様に、水平な面上で、ある一定の質量をもった物体を水平方向に引っ張るとき、その物体の進行方向逆向き(水平)に働く力を摩擦力(frictional force)という。後述の静止摩擦力と区別するために動摩擦力とも呼ぶ。
また、物体が静止していても働く摩擦力を静止摩擦力という。物体の質量が大きい場合、その物体を動かすのにかなりの力を要し、ある程度の限界まで引っ張らないと物体は動かない。この物体が静止している限界の状態、すなわち物体が動き出す直前の状態を最大静止摩擦力いう。
このときの比例定数μを摩擦係数と呼び、面及び物体の材質や表面状態(凹凸など)によって定まる。なお、この値は動摩擦力と静摩擦力で異なるため、動摩擦係数、静摩擦係数とそれぞれ呼ぶ。しかしながら実際に一定の荷重、速度で摩擦係数の測定を行なっても、摩擦力が数%~数10%は変動する場合もある。いわゆるスティック・スリップ現象という摩擦力が周期的に大きく変動する現象が現れることもある。
摺動する面の面積に摩擦力が無関係なのは、マクロレベルの仕上げでは表面の凹凸があり、原子レベルの相互作用の生じるぐらいの距離に近づく部分(真実接触面積)が極めて限られていて、みかけの接触面積が意味をもたないからであると考えられている。
『摩擦力の発生の背景にはクーロン力というものがある。概念的には次の様なことである。
物体と面の間に摩擦力が起きるとき、明らかに物体と面は接触している。この物体を構成しているのは何万個もの原子であり、また、もちろん物体と接触している部分の面も原子で構成されている。
これらの物体の原子と面の原子同士がお互いにクーロン力によって引っ張り合う。これが摩擦力及び静止摩擦力を引き起こす原因である。また、物体が動き出すのは、このクーロン力が切れてしまうからである。このことから動いている物体と面の間に働く摩擦力は常に一定だということが分かる。』という見方もあるが、摩擦力がクーロン力のよい事例であるかどうかは疑問である。
定性的には、2種類の金属間のいわゆる乾燥摩擦状態での、摩擦係数を比較する実験からは、原子間距離の近い金属の組合せの摩擦係数が大きいなどの結果がある。
お
クーロンの摩擦法則
摩擦力が、摩擦面の面積や、すべり速度に無関係に、荷重 P だけに比例するというのをクーロンの摩擦法則という。
すなわち、比例定数を μ とすれば摩擦力 F は
である。摩擦力の発生する理由
摩擦力は、2つの面の間の凝着の発生と破壊によるものと、柔らかい材質側を変形させる力によるもの両方が関係していると思われる。摩擦係数は、金属どうしで0.4ぐらいであるが、固体潤滑材(2硫化モリブデン・グラファイト)では、0.2程度まで低下する。固体潤滑材は、きわめて壊れやすい構造をもった、材料であることが摩擦力の低減に有効である。