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ヒト

ヒトとは生物学的に見たわれわれのこと。人間とほぼ同義。より一般的に使われる「人」に対して、「人間」は社会的な存在として用いられることが多い。(社会との関わりについては人間の項を、法律的な定義についてはを参照のこと)

ヒト科:
分類
ドメイン: 真核生物
界: 動物: 
門: 脊索動物: 
亜門: 脊椎動物: 
門: 哺乳綱: 
目: 霊長目: 
亜目: 真猿亜目: 
下目: 狭鼻下目: 
科: ヒト科: 
''' ヒト属(ホモ属)
ヒト種(サピエンス種)'''

Table of contents
1 生物学的分類
2 人類の起源と進化
3 関連項目

生物学的分類

動物界 - 脊椎動物門 - 哺乳綱の中の、霊長目 - 真猿亜目 - 狭鼻下目 - ヒト上科 - ヒト科に属する動物の総称をヒトまたは人類という。進化論提唱以降、人間とサルの生物分類学的区別の議論の中から生じた概念である。より具体的には、現生人とチンパンジーの共通祖先から分岐して以降の現生人に近いグループを指す。初期人類の化石の出土がアフリカに集中していることから、人類発祥の地はアフリカであることがほぼ定説となっている。

現生する人類にもっとも近い動物は、近親順にチンバンジー属、ゴリラ、オランウータンである。これらの種は、かつてはまとめてショウジョウ科に分類されていたが、mtDNA(ミトコンドリアDNA)分析の発達により分岐順がはっきりしてきたこと、またmtDNA上の差異がわずかであることから、より近親に分類される方向に変化してきている。(通説では人類とチンパンジーのmtDNAは98.5%以上一致するとされる。ただし塩基対の挿入や消去が未考慮であるため、これらを考慮すると共通部分は95%にすぎないとの指摘もある)

分類の一例(現生種のみ)

注)この分類の場合、ヒト上属が人類となる。また、ヒト上科のうち人類を除く霊長類は類人猿とよばれる。

考古学上の人類種

現存するヒト科の動物は現生人ただ1種であるが、かつては多種多様な人類種が存在した。この分野における発見は近年目覚しいものがあり、毎年のように新種が発見されている。また研究が進むにつれて分類面でも何度か見直しがなされている。下表に考古学上の人類種を列挙するが、これらについても暫定的なものと捉えた方がむしろ正しいだろう。

人類種の一覧
種(亜種) 備考
サヘラントロプス属 (Sahelanthropus)   ヒト科の分類に異説あり
  チャンデス (tchadensis) トゥーマイ猿人
オルロリン属 (Orrorin)   ヒト科の分類に異説あり
  ツゲネンシス (tugenensis)  
アルディピテクス属 (Arudipithecus)    
  ラミダス・カダバ (ramidus kadabba) ラミダス猿人の亜種、ただし別種の可能性あり
  ラミダス・ラミダス (ramidus ramidus) ラミダス猿人
ケニアントロプス属 (Kenyanthropus)    
  プラティオプス (platyops)  
  ルドルフェンシス (rrudolfensis)  
アウストラロピテクス属 (Australopithecus)   華奢型猿人
  アナメンシス (anamensis)  
  アファレンシス (afarensis) アファール猿人(ルーシー)
  バーエルガザーリ (bahrelghazali)  
  アフリカヌス (africanus) アフリカヌス猿人
  ガルビ (Garhi)  
パラントロプス属 (Paranthropus)   頑丈型猿人
  エチオピクス (aethiopicus)  
  ボイセイ (boisei)  
  ロブストス (robustus)  
ホモ属 (Homo)    
  ハビリス (habilis) ホモ属の分類に異説あり
  エルガステル (ergaster) エレクトスと同種説あり (トゥルカナ・ボーイ)
  エレクトス (erectus) 北京原人,ジャワ原人,ソロ人
  アンテセソール (antecessor)  
  ハイデルベルゲンシス (heidelbergensis)  
  ネアンデルターレンシス (neanderthalensis) ネアンデルタール人(旧人)
  サピエンス・イダルツ (sapiens idaltu) 現生人類の亜種
  サピエンス・サピエンス (sapiens sapiens) クロマニョン人(新人),現生人

  1. 北京原人はかつては独立な属の1種と位置づけられ、シナントロプス・ペキネンシス(Sinanthropus pekinensis)と呼ばれていたが、現在ではホモ・エレクトスの1亜種と考えられている。
  2. ジャワ原人はかつて独立な属の1種と位置づけられ、ピテカントロプス・エレクトス(Pithecanthropus erectus)と呼ばれていたが、現在ではホモ・エレクトスの1亜種と考えられている。
  3. ネアンデルタール人は現生人の亜種と考えられていた時期があった。亜種の場合はホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシスと呼ばれるが、現在はmtDNA分析の結果から別種とされている。
  4. ホモ・サピエンス・イダルツはエチオピアで発見された約16万年前の化石人類。現生人類にきわめて近い特徴をもつため、ホモ・サピエンスの亜種と分類されている。

人類の定義

前述の通り、チンパンジーと分岐して以降の種を人類と呼ぶため、人類の起源の探究は人類とチンパンジーの直近の共通祖先探しを意味することになる。チンパンジーとの分岐が注目されるのは、たまたま現存する最近親種であるからにすぎないともいえるが、人類の生物学的特長の定義については、過去に数多くの議論がなされてきた。初期の議論では主に脳の容積や脳に関連が深いと思われる道具の使用等が注目されていたが、近年の研究成果によればそれらは人類誕生後かなり後になって獲得された性質であることが判明しており、現在の学説では、直立二足歩行犬歯の縮小が人類の特徴とされている。

特に重要なのは直立二足歩行であるが、その起源についてはさまざまな仮説があり、定説といえるものはない。少し前までは乾燥化への適用説が有力であったが、近年発見されたトゥーマイ猿人ラミダス猿人の生息地域は森林であったと想定されることから、別の要因の検討も盛んである。
そのひとつとして、近年、チンパンジーの木登りと人間の直立二足歩行に共通してみられる腰の筋肉の使用方法に着目が集まってきている。この説によれば、樹上生活への適用の一形態として直立二足歩行の下地が成立したことになる。

人類の起源と進化

イーストサイド・ストーリー

アフリカで生息していた人類の祖先となる化石類人猿がチンパンジー属と分岐したのは、約600万年前といわれている。その分岐過程については、イヴ・コパンスの「イーストサイド・ストーリー」(1983年)が有名である。
東アフリカは直下にホットプリュームを持つため東西に分裂しつつあるが、この過程で生まれた大地溝帯により類人猿が二つのグループに分断された。その後、東側が乾燥化し森林が後退したため、サバンナへの適用として直立二足歩行型へ進化したというのがコパンスの説である。

コパンスの説は論理的整合性の鮮やかさから広く受け入れられたが、「人類の定義」の項で述べたように初期人類が森林に生息していた可能性が高いこと、また人類か否かについて見解が分かれるもののサヘラントロプス(600~700万年前)が中央アフリカのチャドで発見されたことから、見直しの機運が高まりつつある。

しかしながら、初期の分岐過程の経緯はともかくとして、直立二足歩行という特殊な進化が真にその効力を発揮したのは、サバンナにおいてであった。
サバンナにおける直立二足歩行の優位論はさまざまあるが、主なものは下記の通りである。

また、サバンナに限らない普遍的な特徴として、頭部が身体の重心線上に位置するため、脳の巨大化を可能としたことが挙げられる。(ただし直立二足歩行は巨大化の必要条件であって十分条件ではない)

数多くのメリットが挙げられる直立二足歩行ではあるが、一方で構造上不可避なデメリットも存在する。最大の問題点は難産である。二足歩行により下半身にかかる内臓の負荷を受け止めるため、骨盤が御椀型となったが、必然的に産道が狭隘化し、出産(特に頭部の排出)が困難となる。
こうした構造的な要因もあるため、一般的な認識とは異なり、初期人類は直立二足歩行へ進化を踏み出した後も、類人猿に比べて脳はそれほど大きくはならなかった。

尚、原始的な人類は猿人と呼ばれるが、猿人は大きく分けて2種類存在する。
まず最初に華奢型猿人(アウストラロピテクス属)が登場する。華奢型猿人の身体は、類人猿的な上半身と二足歩行適用した下半身をくっ付けたイメージを想像すればよい。華奢型猿人はしばらくの間栄えたが、250万年前頃に頑丈型猿人(パラントロプス属)が現れた時期を境に、化石から姿を消している。
頑丈型猿人は華奢型猿人に比べて大臼歯が巨大でエナメル質が厚く、頭蓋骨に矢状稜と呼ばれる隆起があるのが特徴である。矢状稜は咀嚼筋を付着させるために発達した。頑丈型猿人が現れた時代はアフリカの乾燥化が進んだ頃と一致しており、繊維質の多い植物を摂取するために適応したと想定される。
頑丈型猿人は、ほぼ同時期に出現したホモ属としばらく共存していたが、約100万年前頃に絶滅した。

ホモ属の誕生

頑丈型猿人がサバンナ化への適用として硬い植物へ適用したのに対し、別の進化を遂げたグループが存在した。すなわち我々の祖先となるホモ属の誕生である。ホモ属はサバンナ化に対し、肉食化(より正確には動物性食物比率の向上)と言う形で対応した。

肉食といっても初期ホモ属の採取方法は狩猟ではなく死肉漁りだったと考えられている。サバンナは大型肉食獣がおり森林に比べ草食動物が捕食される可能が高い。また死肉にはハゲタカが集まり、視界も開けているため、遠方からも発見は比較的容易である。

そしてこの人類の肉食化は、進化の面でも劇的な変化をもたらした。
動物性食物は植物性食物に比べ遥かにカロリー密度が高い。また植物性食物は消化に長い腸を必要とするが、動物性食物はずっと短い腸でこと足りる。腸はカロリー消費の大きい器官の一つであるため、これが縮小できるということは身体のカロリー消費効率が高まるということを意味する。
このため、ホモ属は他の器官にあてられる余剰なエネルギーを手にすることができた。この余剰の獲得は、人体で最大の高エネルギー消費器官である脳が巨大化できるための、2番目の前提条件が整ったことを意味している。
一方、脳の巨大化の副作用である難産に対しては、早産を行うことで対処した。早産により脳は体内で一定以上に成長する前に体外に排出される。

このように人類は直立二足歩行・肉食による余剰エネルギーの獲得・早産という、脳の巨大化を可能にする3つの必要十分条件がはじめて整ったが、これらの条件は同時に脳が巨大化を要する必然性ももたらした。

死肉を漁るといっても、肉や内臓の部分は既に肉食獣によって大半が食い荒らされてしまっているはずである。よって初期のホモ属は残されたわずかな栄養源である骨髄を主に食していたと考えられるが、骨髄はミネラル等の栄養価に富む反面、硬い骨を割る必要が生じる。幸い二足歩行により両手が自由になっていた人類は、ここではじめて道具を使うことを覚えた。石器の誕生である。
オルドヴァイ文化(250万年前~120万年前)と呼ばれる最初期の石器群は、自然石を打ち欠いてできるチョッパーと剥離片で構成されたごく単純なものであったが、縮小した犬歯の代わりに肉や骨の解体するには十分な道具となった。
道具の発明は高度な知能が前提となる。道具の製造・使用には手を器用に扱う必要もある。よって脳の巨大化は必然でもあった。

さらに早産は子育てに大きな労力が要求される。幸い動物性食物を多く摂取することで食事にかける時間は短縮されるため、余暇は多くなった。また養育過程の変化は家族的な生態を促進したことだろう。高度な知能を伴った人類は、より「人間的な」生き方へと変化を遂げたに違いない。

こうして人類は、約250万年前のホモ属誕生を境に、劇的に脳の巨大化を推し進めていくこととなる。

第一次アウト・オブ・アフリカ

(・・・以下、つづく)

関連項目





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