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イリアス

イリアス(イーリアス、イリアッド)は、ホメロス(ホメーロス、ホーマー)によって作られたと伝えられている叙事詩である。ギリシア神話を題材とし、トロイア(イリオス)戦争十年目のある日に生じたアキレウスの怒りから、イリオスの英雄ヘクトルの葬儀までを描写する。ギリシアの叙事詩として最古のものながら、最高のものとして考えられている。 叙事詩環(叙事詩圏)を構成する八つの叙事詩のなかの一つである。

もともとは文字ではなく口承によって伝えられてきたもので、琵琶法師が平家物語を演ずるようにして歌われていた。 オデュッセイア第八歌には、パイエケス人たちがオデュッセウスを歓迎するために開いた宴に、そのような楽人デモドコスが登場する。 オデュッセウスはデモドコスの歌うトロイア戦争の物語に涙を禁じえず、また、自身でトロイの木馬のくだりをリクエストし、再び涙を流した。 イリアスの聴衆たちも、アキレウスと共にアガメムノンの理不尽を憤り、アキレウスがヘクトルへの復讐を果たしたくだりではカタルシスを覚えたことだろう。

イリアスの作者とされるホメロス自身も、そのような楽人(あるいは吟遊詩人)だった。ホメロスによってイリアスが作られたというのは、紀元前8世紀半ば頃のことと考えられている。その後、イリアスは紀元前6世紀後半のアテナイにおいて文字化され、紀元前2世紀頃アレキサンドリアにおいて、われわれが今見ることのできるような形にまとめられたようだ。

Table of contents
1 あらすじ
2 イリアスの翻訳
3 関連項目

あらすじ

パリス(イリオス王プリアモスの王子)に奪われたヘレネを取り戻すべく、ヘレネの夫メネラオスをはじめとするギリシア勢がイリオスに攻め寄せてから十年の歳月が流れていた。 ギリシア勢はメネラオスの兄でミュケナイ王のアガメムノンの指揮の下で戦い、イリオス勢はプリアモスの長子ヘクトルの指揮の下に戦っていた。 アキレウスは、友人パトロクロスと共に、ミュルミドーン人たちを率いて戦いに参加していた。

アキレウスの怒り

クリュセのアポロン神殿の祭司クリュセスは、ギリシア勢にとらわれていた娘クリュセイスを救おうと、莫大な身の代の品を持って参陣した。 クリュセイスはアガメムノンの戦利品となっていた。 アガメムノンは彼女に執着しており、どうしても手放したくなかった。 そこで、身の代を受け入れて娘を返すべきだと言う諸将に自分だけ反対し、クリュセスを侮辱して追い返した。 クリュセスがアポロンに復讐を願うと、アポロンは疫病をはやらせ、ギリシア勢を苦しめた。

疫病の発生から十日目、アキレウスの発議により集会が持たれ、カルカスによって、アポロンの怒りを鎮めるための献策がなされた。 それは、身の代なしにクリュセイスを返すというものだった。 アガメムノンはしぶしぶ同意したが、自分の戦利品が減る代わりに、諸将に戦利品を分けてくれるように頼んだ。 しかし、アキレウスは戦利品を分配しなおすべきでないことを主張し、イリオス陥落の際の分け前を多くするから我慢してくれと頼んだ。 アガメムノンは立腹し、「わたしには戦う義務などないのに、あなたがた兄弟のために戦闘に参加しているのだ」というアキレウスを侮辱し、「われわれのために戦ってくれる戦士は山ほどいる。そんなことを言うなら、戦いに参加してくれなくてもいい」と言った。そして、クリュセイスの代わりだとして、アキレウスの戦利品で愛妾のブリセイスを取り上げた。

腹をたてたアキレウスは母テティスに、「ゼウスにイリオス勢の味方をしてもらってギリシア勢を追い詰めさせ、アガメムノンに自分を軽んじたことを後悔させてほしい」と頼んだ。 テティスが請け合い、ゼウスに頼み込むと、ゼウスもこの願いを受け入れた。 ゼウスの妻ヘラは、ゼウスがテティスの願い通りイリオス勢の味方をするつもりではないかと気付き、ゼウスを難詰したが、息子ヘパイストスのとりなしで、とりあえず怒りを納めた。

アキレウスはその日以降、集会にも出ず、戦闘にも参加しなくなった。旗下のミュルミドーン人たちも、浜辺で槍投げなどに打ち興じていた。

総攻撃の開始

ゼウスは、テティスの願いをどのように叶えるのがよいかを考え、ギリシア勢の総大将アガメムノンを夢でまどわすことにした。 アガメムノンは、ネストルが「オリュムポスの神々は皆ギリシア勢の味方をすることになったから、全軍で攻め寄せればイリオスを攻め落とせる」と説くところを夢に見た。 目が覚めたアガメムノンは、すぐにでもイリオスを陥落させることができると思い込み、総攻撃を決意する。 しかしゼウスは、ギリシア勢を劣勢に追い込み、アガメムノンに、アキレウスを怒らせたことを後悔させることが目的だったのである。

ギリシア勢が美々しく隊伍を整えると、イリオス勢も攻撃準備を完了した。両軍は、まさに激突しようとしていた。

パリスとメネラオスの一騎打ち

このときパリスは軍勢の先頭に立ち、「誰でもいいから俺と勝負しろ」と言った。 メネラオスは、仇敵の姿を見るや、喜び勇んで飛び出してきた。 しかしパリスはメネラオスを見ると怖気づき、逃げ出してしまった。 これを見たヘクトルは、イリオスの災厄の種であるパリスの不甲斐なさをなじり、「貴様のような格好ばかりの奴は、さっさとメネラオスに殺されてしまえばよかったのだ」と責めた。 するとパリスは殊勝にも「私とメネラオスで一騎打ちをし、勝ったほうがヘレネと奪った財宝を取ることにしたい」と申し出た。 ヘクトルは喜び、ギリシア勢にこの話を申し込んだ。 アガメムノンもこの話を呑み、両軍の戦士が武装をはずして見守る中、両者が一騎打ちを行うことになった。

対峙するパリスとメネラオス。双方が槍を投げるが、両者共にこれを避けた。 次にメネラオスが剣を抜いて切りかかると、メネラオスの剣はパリスの兜にあたって砕けた。 パリスがくらくらしているところを、メネラオスが兜を掴んで自軍に引いていこうとした。 するとアフロディテが兜の紐を切ってパリスの窮状を救った。 メネラオスの手には兜だけが残った。 そしてなおも追いすがるメネラオスから守るために、濃い霧でパリスを隠し、イリオスに退却させた。

メネラオスは姿を隠したパリスを探すが、見つけることができない。そこでアガメムノンはメネラオスが勝ったとして、ヘレネと財宝の引渡しをイリオス勢に申し入れた。

パトロクロスの出陣

アキレウスなしでも優勢に立っていたギリシア勢も、名だたる英雄たちが傷ついたことをきっかけにして総崩れとなり、陣地の中にまで攻め込まれる。これを見たパトロクロスは、出陣してギリシア勢を助けてくれるようアキレウスに頼んだが、アキレウスは首を縦に振らない。そこでパトロクロスはアキレウスの鎧を借り、ミュルミドーン人たちを率いて出陣する。

パトロクロスの死

アキレウスの鎧を着たパトロクロスの活躍により、ギリシア勢はイリオス勢を押し返す。しかし、パトロクロスはイリオスの王プリアモスの息子で、事実上の総大将であるヘクトルに討たれ、アキレウスの鎧も奪われてしまう。

アキレウスの出陣

パトロクロスの死をアキレウスは深く嘆き、ヘクトルへの復讐のために出陣することを決心する。アキレウスの母テティスはアキレウスのために新しい鎧を用意し、アキレウスに授ける。出陣したアキレウスは、イリオスの名だたる勇士たちを葬り去る。形勢不利と見てイリオス勢が城内に逃げ去る中、門前に一人、ヘクトルが待ち構える。

ヘクトルとアキレスの一騎打ち

ギリシア勢とイリオス勢が見守る中、アキレウスとヘクトルの一騎打ちが始まる。アキレウスはヘクトルを追いまわし、ヘクトルは逃げ回ってイリオスの周りを三度回る。しかし、ついにヘクトルはアキレウスに討たれる。アキレウスはヘクトルの鎧を剥ぎ、戦車の後ろにつなげて引きずりまわす。復讐を遂げて満足したアキレウスは、さまざまな賞品を賭けてパトロクロスの霊をなぐさめるための競技会を開く。

ヘクトルの遺体引き渡しと葬儀

競技会が終わった後も、アキレウスはヘクトルの遺体を引きずりまわすことをやめない。ヘクトルの父プリアモスはこれを悲しみ、深夜アキレウスのもとを訪れ、息子の遺体を返してくれるように頼む。アキレウスはプリアモスをいたわり、ヘクトルの遺体を返す。ヘクトルの葬儀の記述をもって、イリアスは終わる。

イリアスの翻訳

関連項目





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