アーダルベルト・シュティフター(Adalbert Stifter, 1805年10月23日 - 1868年1月28日)はオーストリアの画家、小説家。
画家を兼ねているためか、彼の小説における自然描写は細やかで静謐、そして美しい。彼は「芸術は貴い崇高なものである」「偉大なものは、劇的なまれにしか起こらないことよりも、ささやかでありふれた日常的なものにこそあらわれている」と考えていた。このため、彼はありふれたもの・普遍的なものを通して、高貴さ・偉大さを表現しようと努めた。英雄の超人的な行為よりも、ありふれた人々の日常的な行為にあらわれた、質素・節度・克己を小説の題材として選んだ。
シュティフターの小説にはささやかな出来事や普通の人々しか出てこない。そのため、同時代の人々にはつまらないと批判されていたようである。確かに、劇的なできごと、英雄的な行為、あっと驚く結末を小説に望む人々には、シュティフターの小説はつまらないものでしかないだろう。しかし、かなたにそびえる雪を頂いた山々、疲れて眠りこんだ子供たちのあどけなさ、少年の日の思い出、これらを愛する心を持った人は、きっとシュティフターの小説が気に入るだろう。
主な著作
- 「習作集」(短編集)
- 「石さまざま」(短編集)
- 「みかげ石」
- 少年の日、家の前にあったみかげ石に座って通りを眺めていた作者におこったちょっとした出来事と、それをきっかけにして祖父から聞くことができた、村に伝わる古い話についての物語。
- 「石灰石」
- 測量をなりわいとする主人公が、ある荒地で出会った牧師についての物語。牧師は清貧に慎み深く暮らしている。上着は何十年前に仕立てたものかわからないぐらいである。しかし、常に一見してわかる高価な肌着を着けており、しかもそれを恥じて隠している。牧師の死後、その秘密が明らかになる。
- 「電気石」
- 「水晶」
- シュティフターの最も有名な作品。山村に住む兄弟が、峠を越えて祖父母を訪ねた帰り道、降りしきる雪に道を見失い彷徨う。妹を気遣う兄、無心に兄にしたがう妹、静かで荘厳な自然描写が美しい。
- 「白雲母」
- 「石乳」
- 祖先から城だけを受け継いだ、貧乏貴族の物語。独身の主人公は城に支配人の家族とともに住んでおり、彼は支配人の子供たちを、自分の子供であるかのようにかわいがっていた。子供たちの最年長者である長女が美しく成長したある日、ナポレオンに率いられたフランス軍がオーストリアに攻め入り、主人公の城も、戦争に巻き込まれそうになる。そこへ、よんどころない事情により、ドイツ人にもかかわらずフランス軍に味方せざるを得なかった青年将校が飛び込んできて、主人公たちに強烈な印象を残して去っていく。
- 「晩夏」
- 「ヴィティコー」