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唯物論

唯物論 (materialism)とは、事物の本質ないし原理を物質や物理現象であるとし、非物質的な存在や現象を否定するか、物質や物理現象に付随し、それらに規定される非本質的なものであるとする考え方、立場。

Table of contents
1 唯物論の諸形態
2 唯物論に対する批判と、その反駁
3 唯物論の歴史

唯物論の諸形態

唯物論は、文脈に応じて様々な形をとるが、よく知られたものに以下のようなものがある。

世界の理解については、原子論と呼ばれる立場がよく知られている。これは原子などの基本的な物質的構成要素とその要素間の相互作用によって森羅万象が説明できるとする立場で、場合によっては、森羅万象がそのような構成要素のみから成っているとする考え方である。非物質的な存在を想定し、時にそのような存在が物質や物理現象に影響を与えるとする二元論や、物質の実在について否定したり、物質的な現象を観念の領域に付随するものとする観念論の立場と対立する。(経験論現象学も参照のこと。)

人間の理解に関しては、意識や心理現象、自由意志などの存在を否定するか、それらが物質的な現象に付随する現象であるとする立場は唯物論として知られており、心身二元論などと対立する。(行動主義も参照のこと)

生物や生命の理解に関しては、生命が物質と物理的現象のみによって説明できるとする立場があり、生気論と対立する。また、生物が神の意志や創造行為によって産み出されたとする創造説を否定し、物質から生命が誕生し、進化を経て多様な生物種へと展開したとする、いわゆる進化論の立場も、唯物論の一種と考えられることがある。

歴史や社会の理解に関しては、マルクス主義唯物史観が特によく知られている。理念や価値観、意味や感受性など精神的、文化現象が経済など物質的な側面によって規定されるとする立場をとる。また、社会の主な特徴や社会変動の主な要因も、経済の形態やその変化によって説明できるとされる。

唯物論に対する批判と、その反駁

哲学、思想の領域では、唯物論は、非物質的な存在を信じる立場やそのような題材を扱う思索は形而上学である、非科学的であるなどと批判的に形容することがある。一方、唯物論に対しては還元主義的である、客観主義的である、といった批判的形容が用いられることがままある。

宗教や道徳に関する議論の文脈では、唯物論の人間や生命に対する理解は人間の重要な側面を取り落としている、科学至上主義である、神に対する冒涜である、といった形で批判されることも多い。

唯物論の歴史

初期古代ギリシア哲学には思惟と物質を分ける思考はなかった。タレスの水を原理として立てる言説にその例を見ることができる。

その後、古典期に入り、パルメニデス、エピクロス、などに唯物論の萌芽を見ることができる。アリストテレスはエイドスがマテリアに本性的に先行することを説いたが、その自然学(ピュシカ)などは唯物論的な解釈を許した。エピクロスの影響下に書かれたルクレティウスの『物の本性について』はルネサンス期に大きな影響を与えた。

時代をくだり、トマス・ホッブズやピエール・ガッサンディは伝統的な唯物論者の流れに属している。反対に、デカルトは二元論的な思想的基礎を自然科学に加えようとした。さらにのちの唯物論者としては、フォイエルバッハの他に、ディドロやフランスの啓蒙思想家たちがいた。

近代になると、カール・マルクスフリードリヒ・エンゲルスが、ヘーゲルの弁証法的観念論を逆立ちさせて、唯物論に量的な変化とその過程に関する考え方を加え、いわゆる弁証法的唯物論を導き出した。それを歴史的過程に適用したものが、史的唯物論(唯物史観)である。

近年では、ポール・チャーチランドとパトリシア・チャーチランドが、極端な唯物論を提唱している。すなわち、精神の現象はまったく実在するものではないと主張している。

現代の唯物論においては、物質という言葉は、エネルギーや物理的な力、空間のゆがみなど、科学的に観察可能なすべての実在をさす意味にまで拡大されている。また、この意味において「物質世界」という言葉は使われている。





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