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狂牛病問題

ここでは、狂牛病をめぐる最近の問題や、その動向について記載する。狂牛病そのものについては牛海綿状脳症を参照。(正確な名称は「牛海綿状脳症」であるが、マスコミでは「狂牛病問題」などと呼ばれることが多いのでここではこの名称を用いることにする。)

Table of contents
1 米国初のBSE

米国初のBSE

発端(BSE発生の疑い)

米国のアン・ベネマン(Ann Veneman)農務省長官は2003年12月23日夕刻(日本時間12月24日午前)の記者会見で、ワシントン州で飼育されたホルスタイン種の牛一頭が、検査の結果 BSE に陽性とみられる反応を示したことを明らかにした。また、感染したとみられる牛の脳組織サンプル(検体)をイギリスの研究所[ウェイブリッジ中央獣医学研究所(Weybridge Central Veterinary Laboratory)]に送り再検査による確認を求めた、とも述べた。

問題の牛は1999年に生まれ、ワシントン州西部のヤキマ郡(Yakima County)マブトン(Mabton)の大規模酪農場で育ったものとされている。2003年12月9日、食肉処理場に運ばれる際に歩行困難の症状が見られたため、念のため脳組織の検体を12月11日アイオワ州エイムズ(Ames)市の国立獣医学情報研究所(National Veterinary Services Laboratory、国立獣医療研究所とも)に送り、BSE 検査を二回にわたって実施した結果、二回とも陽性の反応を示し、12月22日に発覚したとされる。ベネマン農務省長官は「この牛とともに飼育されていた4000頭の牛はただちに隔離された」とも述べた。

米国内で BSE の疑いを受けた牛が発見されたため、日本韓国は直ちに今後の状況が判明するまでの間、当面の米国産牛肉輸入差し止め措置を取った。世界最大の牛肉生産国である米国に対し、牛肉輸入量で第1位と第3位を占めるといわれる日本と韓国の輸入停止により、米国経済・国際経済に与える影響は、きわめて大きくなることが予測された。

翌日(日本時間12月25日)朝までの間に、日本と韓国に続き、メキシコ(輸入量第2位)、ロシアブラジルオーストラリア台湾シンガポールタイマレーシアチリコロンビアそして香港が相次いで輸入差し止めあるいは一時輸入差し止めを決めた。この時点で、輸入差し止め措置を行なった国は少なくとも12ヶ国と1地域となり、その合計は米国の牛肉輸出量全体の7割に及ぶ。ちなみに、欧州連合は牛の成長ホルモン(成長促進剤)投与をめぐって、すでに輸入を禁止していた。

日本国内の報道によれば、農林水産省厚生労働省は同日午前中に米国産牛肉と牛肉加工品、生体牛の輸入を一時的に取りやめとし、輸入に必要とされる動物検疫所の輸入検疫証明書発行も停止。その日のうちに BSE 対策本部(本部長・金田英行農水副大臣)を設置した。

国内の外食産業やスーパーなど牛肉を取り扱う企業は、終日今後の対応に追われた。日本子孫基金の小若順一事務局長は毎日新聞のインタビュー取材に応え、「米国は BSE は出ないという大前提に立ち、欧州並みの対策すら取ってこなかった」ことを挙げて米国の対応を批判、米国での BSE 発生に違和感を感じないと述べ、さらにオーストラリア産牛肉など、安全上比較的リスクの少ない市場へシフトしてこなかった企業の対応を批判した。

また、亀井善之農水相は25日午前の記者会見で、(ウェイブリッジ獣医学研究所による検査の)結果次第と条件をつけながらも、米国に対し牛の全頭検査を求めたい、と言明。

日本は、2001年10月から、病死・事故死も含め、すべての牛を検査する全頭検査を実施してきた。のみならず、2003年6月4日に成立し、6月11日公布、12月1日に施行された「牛の個体識別のための情報管理及び伝達に関する特別措置法」(いわゆる牛肉トレーサビリティ法、あるいは牛肉履歴管理法とも呼ぶ)によって、すべての牛に個体識別番号を付けることを罰則つきで義務づけ、識別番号をインターネットで検索すれば「出生年月日」「雌雄の別」「母牛の個体識別番号」「飼養施設の所在地」「牛の種別」など牛の個体がたどった履歴を調べることができるようになっている。これは世界でもっとも厳格な牛の個体管理であるといわれている。25日に行なわれた記者会見で福田康夫官房長官が「(米国で)全頭検査をしなくても納得いく状況があれば、(日本への輸入を)認めなければいけない状況もあるかもしれない」と述べた発言は、全頭検査なしで輸入解禁を容認するもので、関連業界や酪農団体などからダブルスタンダード(二重の基準)だと批判する声があがっている、という報道も。実際、日本は2003年5月からカナダからの牛肉輸入を禁止している。このときに、カナダ当局へ要求した全頭検査が受け容れられなかったことを、禁止の理由とされていたからである。

BSEの発生確定

米国農務省は12月25日(日本時間は12月26日)、緊急記者会見を開き、イギリス(ウェイブリッジ獣医学研究所)は、米国農務省が行った第2次検査結果の結果と評価に対して同意していた旨を発表した。そして「米国初のBSEであるという米国農務省の判断は、(同研究所の再確認検査結果で確定されるが)これが覆ることはまずないであろう。」と言明。(なお、同研究所にはこの時まだ、サンプルは届いていなかった。サンプルは翌日に到着が確認され、再確認検査が行われたはずである。)これによって BSE の発生は事実上確定と見なされた。

第三者機関による検査結果を待つことなく、米国農務省の独自の検査結果評価への第三者機関の同意をもって、厚生労働省は、食品衛生法第5条第2項に基づき米国産の牛肉と牛肉加工品について輸入の禁止を正式に決定した。

影響

12月26日の昼過ぎ頃の時点におけるインターネットを経由した海外からの報道によれば、輸入禁止に踏み切った国は24ヶ国から36ヶ国までと、報道によってばらつきがあるものの、合わせると米国が輸出する牛肉の9割近くに上った。米国が自ら BSE 発生を認めたことから、輸入国の大半は輸入禁止または輸入停止の措置を取り、米国産牛肉は貿易市場から消滅する形となった。市場規模は、およそ2000億ドル(20兆円以上)にのぼり、米国の牛肉関連企業は壊滅的な打撃を受けると見られている。

米国で BSE 検査を受けた牛の数は昨年実績で20,526頭。1990年代は毎年数百頭程度にすぎなかったといわれる。にもかかわらず米国産牛肉は安全であると米国政府はくりかえし主張しているが、価格の低下や関連企業株価の低下を止める説得力ある主張となっていないのが実状である。酪農産業に従事する層は保守的傾向があるといわれている。2004年の大統領選挙を控え、ブッシュ政権は厳しい綱渡りを強いられているといえる。

また、日本が輸入する牛肉全体で米国産牛肉が占める割合は50パーセント弱にのぼるため、単純計算では国内の牛肉供給量は3分の2に減るとみられる。米国の牛肉の消費はそのほとんどが、牛どん、焼き肉などの外食で占められており、輸入禁止が長期化した場合、この業態の存続が危ぶまれる。 ヨーロッパなどでの既成慣例では、OIEの指針に基づき、24ヶ月または30ヶ月齢以上の牛に限り全頭検査をすることと、特定危険部位(SRM)の除去により貿易が再開されるケースが通例である。全頭検査もしくはそれ同等の効果がある対策を望む日本の要求基準は、欧州の基準を踏襲する米国との主張と隔たりが大きく交渉の長期化(2004年1月上旬現在)を示唆している。 なお、米国に先立つ5月に初のBSEの発生が確認されたカナダでは、実は1993年にイギリスから輸入された牛にBSEが発見されていた。しかし、輸入されたケースという認識により、この5月まで日本への輸出は続いていた。今回米国初の発生と言われるが、OIEではDNA検査の結果をもとに、「カナダから輸入されたケース」と定義している。

農林水産省では、カロリーベースで6割を輸入にたよる日本の食糧事情の脆弱さを補完するために、緊急事態を想定して対応策を検討し発表している。それによると、休耕田や転作可能な限りの田畑をジャガイモの生産に切り替え、輸入が激減し不測するカロリーを代替するというものである。今回、24万トンの米国ビーフが一年間輸入されなかったとすると、国民1人あたりのカロリー損失は22カロリーである。





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