「編集」の多義性
「編集」と訳される英単語は、editのほかにcompile、redaction、revision、bookmakeなどがある。
- edit(エディット)
- 一般的に「編集」の語を英訳するとなると、この語が提示される。この「編集」は、著作物の修正・註記・改変・削除などの権限を伴う。編集者が行う業務であり、編集部註などとあるのは、この編集である。
- compile(コンパイル)
- コンパイルというと日本語の文脈の中ではコンピュータ用語として扱われることが多いが、これも「編集」する、という意味である。コンピュータにおけるコンパイルとは一般に、人間に理解できるプログラミング言語で書かれた機械への指示を、演算装置が理解できる形に翻訳・再構成することであり、これもまた編集である。
- 著作物一般に関しても、手を加えずそのまま整理・配列する作業を指す。
- redaction(リダクション)
- 校訂・改訂といったニュアンスを持つ。また改訂版自体も意味する。
- チェックをかけて余分なものを取り除き、より正しい状態となるよう整える。オーディオにおけるノイズリダクションはこれに該当する。
- bookmake(ブックメイク)
- この「編集」は、次項で述べる書籍の編集を指す。狭義の編集を行うだけではなく、企画立案から表装までも含む業務である。おそらく訳せば「本づくり」とするのが正確であろう。この語ならば編集、装訂そして製本までも入るためである。
- bookmakerは編集者だけではなく、場合によって出版社、製本会社を指す。また、(私設の)賭博の胴元を指すこともある。
- bookmakeはeditの全範囲や、他の二つの語の指す業務も含むが、それらがbookmakeの下位概念であるわけではない。bookmakeには音楽や映像、ウェブの編集が含まれないからである。
- editは内容に手を加えるという側面を多分に孕み、一方compileは改変してはならない。データの内容を追記・削除・変更を行えないテキストエディタは役に立たないし、コンパイラが自らの創作的な解釈によって変換を加えるようであれば、それはバグと見なされる。
書籍の編集
書籍の編集という作業は、企画から原稿依頼・原稿整理・校正・割付(レイアウト)など、さらには装訂なども含む。
編集が職業として独立するのは日本では明治時代以降で、それ以前は著作家と編集者は未分化であった。現代において編集者は、単に原稿のやりとりをしたり印刷・製本工程に指示を与えるだけではなく、企画立案から、著者に資料提供や助言をおこない、プロデューサー的な役務をもこなす職業となっている。
書籍(などのテキスト)の編集は、映像・音楽の編集と違って何らかの特殊な機材(や、ソフトウェア)が必要なわけではない。無論、本づくりのための知識(印刷や用紙、流通について)や小道具(紙の本を作るならば定規や、級数表など)は必要だが、それはbookmaking的な編集のためのものであって、editingな作業の本質は、純粋に編集者の脳内に存在する。他の分野の編集でも無論その側面はあるが、「手元になにもなくてもできる」という意味で、その傾向が特に強いと言える。
映画の編集
音楽の編集