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自分が他人からどう見えるかを病的に気にしているコンパス、激烈な色情に苦悶し続ける糊、男色家な上に自分を天皇だと妄想し第三者から「奏上」してもらわないと会話できない巨大な消しゴム、強迫観念的に自分の行為を数え続ける以外の思考を停止したナンバリング、サディストの筆の毛穎、老化と死を極度に恐れる下敷き、殺人鬼のパンチ、自分が文具船に潜入したスパイだと妄想するチョーク、アルコール中毒の金銭出納簿…。
その他の乗員も全員、どこまで行くのかもいつ帰れるのかもなぜ航海しているのかも分からない航海のせいで発狂している。それでもなんとか彼らは航海を続けてきた。司令艦から「流刑地の惑星クォールを攻撃し住民を殲滅せよ」との命令が発せられるまでは。
流刑に処せられた凶悪な鼬族10種が住む惑星クォールには1000年の歴史があり、流刑当初は原始的な状態だったものが、わずかな年月で核兵器を開発できるレベルまで文明を発達させていた。彼らの歴史は残忍な刑罰や虐殺、共食いや復讐に満ちた血塗られた歴史である。しかし科学技術の発展は、流刑時に祖先が携えてきた情報の解読によって迅速に行われ、その速度は中世のレベルから人工衛星の開発まで約500年という脅威的な速度であった。
彼らの文明は、地球における宗教改革や世界大戦をなぞるように要領よくこなし、冷戦の時代に突入する。しかしクォールでは冷戦における恐怖の均衡が滑稽なスキャンダルによって破れ、核戦争が起こってしまう。それはちょうど文具船が住民殲滅に来襲したのと時を同じくしていた。
鼬の惑星クォールに来襲した文房具たちは命令通りに殺戮を繰り広げる。彼らは戦争の中で自らの狂気を発散させ、中には正気に戻る者さえいる。文明らしきものは惑星から壊滅するが、しかし鼬は逃げ隠れの天才であり多産でもありしかも穴を掘る。文房具たちはいつまでたっても鼬を全滅させることはできず、次第に自らの狂気によって自滅の道を歩んでいく。
鼬の文明は滅び、文房具たちも全て戦死し、あとに残されるのは荒れ果てた世界とわずかに生き残った鼬たち、そして文房具と鼬の不気味な混血児である…。